集団転位の自己組織化に関する
モデリングおよびシミュレーション
〜金属結晶中のキリンとシマウマ〜

Modeling and Simulation for
Self-Organization of Collective Dislocations
- Giraffe and Zebra in Metallic Crystal -

自然界における自己組織化の例
1. 生命現象における自己組織化現象

(1) 体表模様(1)


(2) 細胞性粘菌の作るラセン波(2)


2.化学反応における自己組織化現象

BZ反応(2)

ターゲットパターン

ラセン波

3.その他の自己組織化現象


雪の結晶成長(4)

味噌汁のBenard対流(5)

Benard対流のセルパターン(6)

台風の渦巻き

金属材料における自己組織化
 金属材料の構造は,"m−mm","mm−μm","μm−sub-micron","nm"のスケールで分類することができますが,私たちは特に"μm−sub-micron"スケールでの集団転位(結晶欠陥)のパターン形成について,そのモデリングおよびシミュレーションを行っています.


 FCC金属材料に繰り返し負荷をかけると,金属の内部に存在する膨大な集団転位の挙動により金属表面の近傍に固執すべり帯(PSBs)と呼ばれる空間パターンが右上の写真のように 自己組織化 されます.
 このPSBsにおけるLadder構造はシマウマの縞に相当し,Vein構造はキリンの斑点に相当すると考えれば分かりやすいでしょう.
 このLadder構造やVein構造は転位およびダイポールの相互作用によって形成されるもので,系がある特別な基底状態に落ち込んで形成される一つの 散逸構造 だと言えます.
 そこで本研究では,結晶欠陥場を粒子描像に基づいた転位密度テンソルを定義し,複雑系の熱力学による検討を介して集団転位の挙動を支配する 反応-拡散方程式 を導出し,本モデルに基づく数値シミュレーションを行って,Vein構造およびLadder構造のパターン形成過程を再現することを目指しています.

反応-拡散方程式
 熱力学的手法に基づき構成式を求めて,転位密度の釣合い方程式に代入すれば,次のような連立形反応-拡散方程式が得られます.

シミュレーション結果
 上で得られた反応-拡散方程式を差分近似し,2次元シミュレーションを行えば,次のような結果が得られます.

等方性パターニングの拡散係数依存性

      

異方性パターニングの拡散係数依存性

Vein構造の形成過程
      

Ladder構造の形成過程
      

PSBsの形成過程
      

PSBsのTEM観察的パターン
  

VeinおよびLadder構造の3Dパターン

■ 出 典
(1) Web Site, " Animals of Africa".
(2) 三池秀敏・ほか2名, 非平衡系の科学III, (1998), 講談社サイエンティフィック.
(3) Klesnil, M. and Lukas, P., Fatigue of Metallic Materials, (1992), 73, Elsevier.
(4) Web Site, "雪の結晶写真館".
(5) Web Site, "回転対流1".
(6) Web Site, "HPC Server/VPP5000 Series".